G.H.BASS と社長の物語
G.H.BASSはブランドを代表する名作ローファーをWeejuns(ウィージャン)と名付けています。
靴にWeejunsとブランド名より大きく表示されています。
その由来をたどると、1930年代にスリッポン型の靴を「Loafers(なまけもの)」という名前で、他の会社が商標登録していたから。
だから、G.H.BASSは「Weejuns(ノルウェーのモカシン)」の名前で商標の差別化をしたのです。
いかにもアメリカらしいというか、これが有名になるためのアイデアだったのでしょう。
Weejunsという名前は、60年代のアメリカのムービースターに履かれ、日本にもその名が響いていました。
当時は銀座「みゆき族」のアイビールックの若者はアメリカから輸入された数少ないWeejunsをなんとか入手して履いていたそうです。
僕がG.H.BASSを知ったのは、1983年です。
当時80年代はG.H.BASSの第二次ブームのピークの最中でした。
1982年のマイケルジャクソンのMTV「スリラー」で履いていたのがWeejuns。
マイケルのスキニーパンツにWeejunsを合わせるコーディネイトが大人気でした。
僕はそんなWeejunsを渋谷「ミウラ&サンズ」でみつけました。
赤いソックスが入ったディスプレイがすごくカッコよかった。
LOGAN BLACK ¥28,000。お店の方に「分割払いできますか?」と聞いたら「ウチは丸井じゃないので」と即却下。
分割払いでしか洋服を買ったことがなかったので、この値段は絶望的です。一括買いなんてできない。
そんな思いの中「アルバイト募集」の広告で「G.H.BASS輸入靴販売」の会社を発見。
もちろん「社販あり」の一行に目を光らせました。
順調に就職して、早速給料より天引きでWeejunsを社販購入。目的達成!うれしかったですね。
そのときは「Weejuns買ったら、辞めよう」と企んでいました。
勤務先は銀座だったので、帰りにWeejunsを履いてSHIPSへ行くとスタッフの方が「いい靴ですね」と声をかけてくれた。
なんか扱いが変わった気がして「いい靴はいいところに連れて行ってくれる」ということわざがあるけど、これもそうだなと実感しました。
当時のWeejunsはヒールまで革でできていて、減りにくくするためにプラスチックパイプが埋め込まれていました。
ヒールの振動がアタマに響くわ、雨が降ると滑るわ、アッパー革もすごく硬くて、新品おろしたてを履きこなすには努力が必用でした。
「ファッションは忍耐だ」と先輩からは言われ、おしゃれの辛さを教えられましたね。
靴買ったら「辞めよう」と思っていた会社勤めも、だんだん面白くなってきて、G.H.BASSのセールスマンをまかされます。
全国のセレクトショップをファッション誌メンズクラブの特約店リストで調べて、売り込む毎日。
当時19歳の自分にいろいろファッションの知識を叩き込んでくれたのはショップのオーナーさんや店長さんでした。
VANブランドとWeejunsの物語やローファーを履きこなす話、たくさん教えていただきました。
G.H.BASSを通じて多くのファッション業界人と知り合うことができました。
しかし、その後のG.H.BASSはブランドが有名になるにつれて大手の商社が総代理店になります。
それがきっかけで僕のG.H.BASSセールス活動はストップすることになります。
時代のファッションはヨーロッパに向き始めたころでした。
G.H.BASSがきっかけで業界入りした自分は、いつのまにか靴にのめり込み、やがて靴を売るために自分の会社GMTを立ち上げます。
そして、35年を経て、再びG.H.BASSの販売を日本で担当することになりました。
自分でも驚きの一言ですが「G.H.BASSを売るなら自分しかいない」という自信に満ちていました。
G.H.BASSは過去と現在と未来をつなぎ合わせることで、永遠の定番になると確信しています。
G.H.BASSはいまや「みゆき族世代」のおじいちゃんと「DCブランド世代」の父親と、「現役ビジネスン世代」の息子の3代に渡り愛用されている靴ブランドです。
どの時代も同じデザインWeejunsが人気です。
現在、世界で売られているWeejunsは、80年代のものと外観は全然変わりませんが、現在は構造部品などを新化させた「ヘリテージコンストラクション」で、履き心地は抜群によくなっています。そう、「忍耐」とは無縁なものになっています。
日本に初めて入ってきて約60年の時を超えたG.H.BASSは、アメリカ生まれの日本育ちといっても過言ではありません。
学校制服のローファーの原型はWeejunsであり、日本の制服がローファーになるほど影響を与えました。
これから3代目の父親達が中学生や高校生の息子、娘を持つ世代です。
G.H.BASSを4代目のお客様にしっかり届けることができるようにしていくことが我々のミッションです。
代表取締役 横瀬秀明