トリッカーズが貫く信念 聖地ノーサンプトンへの思いとは

トリッカーズの工場は、靴づくりの聖地として名高いノーサンプトンの中央に位置しています。ノーサンプトンには革の原料となる牛、なめし工程で使われるオーク、そしてネン川の水という3つの重要な要素が揃っており、ロンドンなど大都市へのアクセスも容易な町です。長い歴史の中で数多の靴工場が繫栄と衰退を繰り返していったこの地において、彼らは今でも静かに世界最高峰のカントリーシューズを作り続けています。時代の流れに合わせテクノロジーや機械を導入しながらも、工場のあらゆる所では職人によるハンドメイドの技術が息づいています。

ノーサンプトンへのこだわり

伝統よりも利便性が優先され、職人技がコスト削減のために軽視されがちな現代において、ブランドのルーツに忠実であり続けるには強い信念が必要です。そんな中、トリッカーズは1829年の創業から常に誠実な仕事を続けてきました。

ノーサンプトンのセントマイケルズ通りにある工場は、1904年からトリッカーズの拠点です。革の裁断・縫製・吊り込み・仕上げに至るまで、全ての作業が一貫してこの工場の中で行われます。他の場所で作られた部品を組み立てるのではなく、何十年もの経験を持つ熟練の職人によって、一から作り上げられているのです。それは彼らの誇りです。

現社長のマーティン・メイソン氏はこう言います。「もちろん、工程の一部を外注してコストを削減することは可能です。しかし、それではトリッカーズらしさが失われてしまいます。英国製、特にノーサンプトンで製造されていることは、私たちのアイデンティティの一部です。この町の伝統は、私たちの歴史と切り離せないものです。私たちにとっても、お客様にとっても大切なことなのです。」

伝統と責任

地元にこだわるということは、古い伝統を守ることだけではなく、責任を果たすことに他なりません。自社工場での生産を続けることは最高水準の品質を維持し、かつ廃棄物を最小限に抑え、さらには地元の雇用を支援することに繋がります。彼らは工場で職人を育成し、素材を厳選し、彼らと価値観を共有する地元のサプライヤーと協力しています。近道はなく、常にひたむきに仕事と向き合っています。

トリッカーズのカントリーシューズとカントリーブーツを作るためには、数週間という長い時間が費やされます。受け継がれた伝統の技術を持つ職人たちの手によるおよそ260もの工程を経たからこそ、長く愛用することのできる上質な靴が誕生します。彼らはトリッカーズの靴がどこでどのように作られているかにこだわりを持ち、真摯な仕事をノーサンプトンの地で貫き続けることが重要だと考えています。他の場所ではトリッカーズと呼ぶことはできないのです。

そしてそんな思いを乗せた靴は、大切に手入れを行い修理を重ねることで「古く」なるのではなく、より履きやすくより味わい深く「成長」していくのです。