人々を魅了するローファーの元祖 ジーエイチバスのウィージャンズとは
ローファーを生んだブランドとして知られるG.H.BASS(ジーエイチバス)。アイコンである”WEEJUNS(ウィージャンズ)”はシンプルかつ完成されたデザインと汎用性の高さから、誕生以来さまざまなカルチャーやムーブメントに浸透しています。そして伝説の名優や世界的なスターから大統領まであらゆる人々の足元を飾り、今もなお世界中から愛され続けています。そんなウィージャンズが、どのようにして作り出され人々を魅了するようになったのか、その歴史を辿っていきます。
創業
1876年にジョージ・ヘンリー・バスによってアメリカ合衆国メイン州で創業されたG.H.BASS(ジーエイチバス)。
着用する人のニーズに応えられる実用的な靴を目指していた彼が最初に手掛けたのは、農業や林業の従事者に向けたブーツでした。改良を重ねることで厳しい要望を満たす製品を作り上げ、労働者たちの間で広く支持されるように。やがてアウトドア向けのシューズやパイロット用の航空ブーツなどを製造するようになり、事業を拡大していきます。
「目的に合わせて可能な限り最高の靴を作る」
彼の掲げたこのシンプルな理念は、それから150年近く経った現在でもブランドの精神として受け継がれています。
”WEEJUNS”の誕生
WEEJUN(ウィージャン)の由来は、「ノルウェーの」を意味するNorwegian(ノルウィージャン)という言葉。ノルウェーを訪れたイギリス人が、現地で作られていたモカシン縫いの靴に注目したことに端を発します。やがてこのノルウェー製シューズはヨーロッパのリゾート地やフロリダ州のパームビーチでも見られるように。しかし当時はロンドンの限られた店舗のみで販売されており、アメリカにはメーカーがありませんでした。そこでG.H.BASSが工夫と改良を施し、甲部分の当て革に小さな切り抜きを加えるなどデザインを刷新。1936年に元祖となるペニーローファーが誕生しました。そして遊び心を込めて名付けられたのが「WEEJUNS ®(ウィージャンズ)」なのです。
ハリウッド
「理由なき反抗」「エデンの東」「ジャイアンツ」の3作を遺し、1955年に24歳で早世したアメリカの伝説的俳優ジェームズ・ディーン。彼の彫りの深い顔立ちと魅力的な佇まいはスクリーン上でもプライベートでも彼にスター性をもたらし、その着こなしにも注目が集まりました。コットンTシャツ、ジーンズ、レザージャケット、そしてウィージャンズという彼の象徴的なカジュアルスタイルを、アメリカ中の男性たちがこぞって取り入れました。
アイビースタイル
ペニーローファーの上品なルックは、アイビーリーグと呼ばれるアメリカ名門大学のキャンパスで圧倒的な人気を博すようになります。カーディガン、チノパンツ、スポーツコート、ニットタイといったアイテムを融合させた知的でありながらもカジュアルな装いは「アイビールック」と呼ばれ大流行。清潔感と節度のある着こなしにおいて、足元の定番はウィージャンズでした。
ケネディ大統領
アメリカ合衆国第35代大統領として知られるジョン・F・ケネディは、そのファッショナブルな出で立ちと美貌でウィージャンズをさらなる高みに引き上げました。彼はペニーローファーの洗練された魅力を反映させた、エフォートレスなアメリカンエレガンスを体現。その独特なスタイルは、ウィージャンズを「アメリカンシューズ」として不朽のものとしました。
ルードボーイ
ルードボーイとは「不良少年」や「ならず者」を指すジャマイカのスラング。1960年代のジャマイカで、貧困や社会問題からギャング化した若者たちを指す言葉として使われ始めました。やがてジャマイカ人のイギリスへの流入に影響を受けた若者たちはジャマイカ文化の様々な側面を取り入れ始め、既存のモッズやテディボーイのスタイルと融合させていきます。彼らはシャープなスーツに細めのタイ、ポークパイハットとウィージャンズを好んで身に着けていました。
マイケル・ジャクソン
1982年にリリースされたマイケル・ジャクソンの「スリラー」は、ショートフィルムのようなミュージックビデオをきっかけに世界中の注目を集めました。彼の人気は爆発的に高まり、音楽と映像を融合させた新たなエンターテイメントの形を確立させたのです。そしてミュージックビデオの中で彼が白いソックスに合わせて着用していたのが、ジーエイチバスのウィージャンズ。このことをきっかけに第二波となるブームが巻き起こり、大ヒットをもたらしました。
新たな世代
MTVから流れるミュージックビデオの影響や、自由な発想で様々なものを取り込むマキシマリズムの広がりから、ウィージャンズはアメリカのユースカルチャーの中で好まれるようになっていきます。パンクやヒップホップのレジェンドからスーパーモデルに至るまで、あらゆるトレンドセッターたちがウィージャンズのアイコニックなペニーローファーを愛用したのです。
唯一無二のアイコン
数多くのローファーが存在する現代にあってもなお、ウィージャンズのペニーローファーは唯一無二の逸品として支持されています。そのデザインはシンプルでありながらも大胆、クラシックでありながらも現代的なムードを兼ね備え、その普遍性で様々なスタイルを結び付け融合させます。
1936年の誕生から約90年を経てもジーエイチバスのアイコンとして世界中の人々から愛され続けるウィージャンズ。現在でも当時と変わらぬ精神を込め、1点1点丁寧な職人の技によって作り上げられているのです。
